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米国の政策金利は引き下げ局面へ、政策金利はどこまで低下するのか?

執筆者の写真: 山木戸啓治山木戸啓治

更新日:2024年12月23日

FRB政策金利の推移

政策金利は、FRBが景気やインフレの状態に応じて設定する金融政策の誘導目標の短期金利です。政策金利が中立金利を下回る状況では、金融緩和がもたらす効果が大きくなります。政策金利が中立金利を超えて上昇すれば、金融引き締め寄りの状態になったと考えられます。政策金利が中立金利を上回る状況では、金融引き締め効果が残ります。

(出典)Federal Reserve Board - PRATES - Data Download Program – Format

2023年7月にFRB(連邦準備制度理事会)は政策金利(フェデラル・ファンド・レート)を5.25~5.5%に引き上げ、23年ぶりの高水準になりました。4年半ぶりに2024年9月から12月にかけて、FRBは政策金利を3会合連続で引き下げました。政策金利はピーク時から1%引き下げられたことで、金融政策スタンスはだいぶ金融引き締め的ではなくなったと考えられます。

政策金利は、FRBが景気やインフレの状態に応じて設定する金融政策の誘導目標の短期金利です。政策金利が中立金利を下回る状況では、金融緩和がもたらす効果が大きくなります。政策金利が中立金利を超えて上昇すれば、金融引き締め寄りの状態になったと考えられます。政策金利が中立金利を上回る状況では、金融引き締め効果が残ります。

今後は利下げの到達点と考えられる中立金利に向けて、おだやかに金利を引き下げる政策が予想されます。 


中立金利とは

中立金利の中央値の推移

中立金利の中央値の推移

(出典)Longer Run FOMC Summary of Economic Projections for the Fed Funds Rate, Median (FEDTARMDLR) | FRED | St. Louis Fed (stlouisfed.org)  https://fred.stlouisfed.org/series/FEDTARMDLR

 中立金利とはFOMC(米連邦公開市場委員会)参加者が想定する長期的に米国の政策金利で適切と考える水準の金利を意味します。2019年6月から2023年12月まで4年半、中立金利の見通しは2.5%程度と推定されてきました。利下げの到達点と考えられる中立金利の水準は、2024年3月から切り上げられ、12月には3%まで引き上げられました。

 これまで、FRBは中立金利の水準に向けて政策金利を徐々に引き下げているとしてきました。今回の声明では、政策金利は中立金利にかなり近づいていると表現を修正し、利下げの到達点が近いことを示唆しています。

 FRBが適切な物価安定のため政策金利を判断する上で重視するのが中立金利です。中立金利は、長期的に景気を冷やさず過熱もさせないと想定する短期金利の水準です。中立金利は金融緩和、あるいは金融引き締めの目安と考えられます。FRBが四半期ごとに年4回公表するFRBメンバーによる政策・経済見通し(Summary of Economic Projections)の中で公表されます。 

経済や物価に長期的に緩和的でも引き締め的でもない均衡水準の自然利子率に、目標とするインフレ率を加えたものが中立金利です。 自然利子率とは、受給が均衡しインフレもデフレも過度に起こさずに順調に経済が成長してゆく中立的な利子率の水準を指します。 自然利子率は最適な資産配分が実現する金利水準であり、中長期的に潜在成長率に類似するとされています。

 経済や物価に長期的に緩和的でも引き締め的でもない均衡水準の自然利子率に、目標とするインフレ率を加えたものが中立金利です。自然利子率とは、受給が均衡しインフレもデフレも過度に起こさずに順調に経済が成長してゆく中立的な利子率の水準を指します。自然利子率は最適な資産配分が実現する金利水準であり、中長期的に潜在成長率に類似するとされています。FRBの目標とする2%のインフレ率を足した3%が中立金利と想定されていますので、米国の自然利子率は1%程度と想定されます。


金融引き締めは長くはっきりしない期間をへて影響をもたらします 

 失業率の上昇などを懸念に、労働市場の減速を歓迎しないと強調し、政策の軸足を景気および雇用への配慮に移しました。FRBは長期的には最大雇用と、2%のインフレ率の達成を目指しています。時間が経てば利上げの効果は出てくると考えられますが、どの程度時間が必要なのかは明確に示されていません。

 米国の1990年以降の5回の利上げ局面を分析しますと、利上げ停止から利下げに至るまでの平均期間は11カ月程度となっています。これを今回のケースに当てはめてみますと2024年7月頃となり、ほぼ平均的な期間を経て利下げ局面に転換しています。

 FRBは景気後退に陥らない程度に経済成長を減速させて目標の2%まで物価上昇率を抑える軟着陸を想定しています。FRBは来年以降の政策金利の見通しで、2024年9月の想定より0.5ポイント引き上げました。2025年末の時点での金利水準の中央値は3.9%で、FRBが目指す金利水準だと受け止められています。1回の利下げ幅を通常の0.25%とした場合、利下げの回数は、前回示した4回の想定から2回に減る計算になります。再来年の利下げの回数は、前回の想定から変わらず2回でした。

 FRBはインフレの状況を見極める指標として重視するPCEの上昇率の見通しも示しました。年10月から12月にかけての上昇率は、前の年の同じ時期と比べて2.5%となり、前回示した想定より0.4ポイント高く、インフレ率が再び上昇する予測です。

 アメリカは、個人消費や雇用の面で堅調さが維持されていますが、トランプ次期大統領が掲げる関税の引き上げが実現した場合、輸入コストの増加が物価上昇につながる可能性も指摘されます。

 日本経済は米国の経済の動きに大きく振り回される存在ですので、米国の政策変更の意味を把握することは重要です。日本企業の業績見通しも、あくまで米国の底堅い景気が前提となります。

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