つみたて投資枠を、定額購入法でどう活用するのか?
- 山木戸啓治
- 3月20日
- 読了時間: 5分
更新日:3月20日
投資時期の分散

(出典)金融庁ホームページ「資産形成の基本」積立投資より著者が作成(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/invest/)
投資時期の分散とは一括で資金を投資するのではなく、長期にわたり投資する時期を分散し続けることです。自分の家計にとって無理のない一定の金額を、コツコツと積み立てる投資を継続することが定額購入法です。
それぞれの資産や個別の銘柄は、往々にしてその性質に応じて様々な値動きをします。経済等の動向によっては結果的に高い価格で投資を行う時期と、比較的低い価格で投資を行う時期が生じることがあります。投資時期を分散することで安くなった局面で買わない選択をすることや、高くなった局面だけ買ってしまう選択を避けられます。
定額購入法で価格変動リスクを軽減する
定額購入法は値上がり・値下がりする価格変動リスクを、軽減させるために毎回一定額ずつを買い付ける方法です。購入額を一定にすることで価格が安い時は口数を多く、価格が高い時は口数を少なく購入することになります。サラリーマンの収入は定期的で金額もほぼ同じですので、定額購入法が最も適した資産運用といえます。
定期的に一定額を投資するという定額購入法で、何が期待できるのかを考えます。
価格が安くなった時により多くの口数を購入することで、単純に平均化した場合より平均購入価額を低下させることができます。複数回に分けて一定額ずつを投資することで、予測できない価格の急騰や急落の影響を和らげることが期待できます。株式等や為替の市場では時には急騰や急落も起こり、投資している資産額が大きく上下することもあります。
株式等のリスク資産を活用しての資産形成では、1回あたりの投資金額などで安全資産とは違う配慮が必要です。退職金などでまとまったお金ができたとしても、一時にたくさんのお金を投資しないのが鉄則といえます。定額購入法は必ず利益を出す方法でも、大きく儲けるための方法でもありません。機械的に分散して購入することで、価格変動リスクを抑える効果が期待できる手法です。
定額購入法を使ってつみたて投資枠を活用する
投資のタイミングにより投資成果は変わることが予想されますが、資産市場の変動のタイミングを完全に予想することは困難です。日々の市場の動向に合わせて投資をするのではなく、下がっても耐えられる仕組みのもとで投資してじっくり持ち続ける姿勢が必要です。
一定金額を長期にわたり続けて積立投資を行うことで、価格変動リスクを抑える効果があります。一度に多額の資金を投資するのではなく、少額を定期的に投資し続けることで価格変動リスクを低減できます。
このような理由から定額購入法を用いた投資手法のもとで、長期積立の分散投資を目指す必要があります。
投資する時期を分散する効果とは

(出典)金融庁ホームページ「投資の基本」(「時間(時期)の分散」(ドル・コスト平均法)の例)より著者が作成
投資の時期を分散することにより、価格変動リスクを軽減する運用手法を説明します。
最初に投資信託を購入した1月時点の単価が、1口10円だった場合10,000円で1,000口購入できることになります。他方で最も値が下がって1口2円になった9月時点では、同じ1万円で5,000口購入できることになります。12カ月経った時点での、投資総額を計算しますと、月額1万円×12ヶ月購入ですので、120,000円購入したことになります。購入した投資信託の総口数は、27,123口になっています。
12カ月経過した時点での、投資信託の時価総額を計算してみます。12月時点での1口当たりの価額は5円ですので、この時点での保有する投資信託の時価総額は5円/口×27,123口で135,615円になります。投資総額の120,000円と比較しますと、15,615円(135,615円-120,000円)の利益が出ていることが分かります。
· 12月末時点の投資信託の価額:5円/口×27,123口(総投資口数)=135,615円
· 12月末時点の投資総額:10,000円/月×12ヶ月=120,000円
· 損益:135,615円-120,000円=+15,615円(利益)
上段のグラフを見ると最初に投資信託を購入し始めたときよりも、12カ月経過した時点の方が1口当たりの価額は下がっています。しかし結果的に計算してみますと、利益が出ていたということになります。
投資の時期を毎月ごとに分散したことで、1口当たりの投資価額が平均化されています。高い価額の時に投資した分の値下がりが、低い値段のときに投資した分の値上がりでカバーされたということができます。
過去30年間の主な下げ相場について
世界47カ国に投資する株価指数が下落直前の高値から、下落後に下落直前の高値を回復するまでに要した期間を調べます。

(出所)Historical performance of the MSCI ACWI indexから著者が作成
「株式投資にとって悲観は友、陶酔は敵だ」
これは米国の著名な投資家ウォーレン・バフェット氏が2008年の「株主への手紙」でつづった言葉です。
定額購入法での積み立て投資は相場の変動に左右されずに、淡々と継続すると長期で利益を生みやすいと考えられます。インデックスファンドへの投資で安定的に資産を増やすには、長期にわたって積立を続けることが望ましいと考えられます。
どのくらいの金額を積立投資に回してよいかは、ライフプランに基づくキャッシュフローを分析した上でないと答えは得られません。荒れ相場の中でも積み立てを継続できるように、無理のない投資額を見極めることが重要です。
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